マーチ博士の四人の息子 (ブリジット・オベール著)を読みました。
この本は、フランスの作家が書いたものとしては珍しく、トリックの面白さを主な特徴とする推理小説です
(帯に「驚愕保証のサプライズ・ミステリ!!」とあります)
トリックをフィーチャーした作品で、楽しい推理の時間を過ごしたい人に、おすすめです
以下の記事は、ネタバレありです
ネタバレを好まない方は、本を読んでから、記事を見てください
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以下、読書当時に思ったことを再現した記事となります
マーチ博士の四人の息子 (ブリジット・オベール著)を本屋で買ってきました
ブリジット・オベールはフランスの作家だそうです
帯には、以下の宣伝が書いてあります
表紙からすでに仕組まれたトリック。見破れますか?
驚愕保証のサプライズ・ミステリ!!
(本書 帯)
そこで、1分ほど、表紙とにらめっこしてみました
表紙がトリックということは、表紙の絵を見た印象による犯人像が実際の犯人とは異なることを示しているのかもしれません
となると、黒く写っている4つの人物らしき影は犯人ではなさそうです
この本のタイトルが「マーチ博士の四人の息子」なので、きっと4人の息子は犯人ではなさそうです
本を開いて登場人物を読むと全部で10人で、マーチ家の4人の息子以外の登場人物は少ないので、犯人は絞りやすそうです
原題は、LES QUATRE FILS DU DOCTEUR MARCHです
原題を訳すと、マーチ博士の四人の息子という同じ意味です
1章 (p7~)
殺人者の日記から始まります
ぼくがワンピースに火をつけると、女の子は悲鳴を上げた。(p8)
殺人者が、日記で、子供の頃、少女を殺害したことを告白しています
だって、ぼく自身が誰でもないんだから。『誰でもない者の覚書』、こいつはなかなか面白いタイトルだと思う。(p10)
殺人者は、自身について、語ってます
で、僕は四人のうちの一人だ。(p11)
帯に書いてあったことからすると、殺人者は四人の息子は犯人ではなさそうなので、現時点では正体不明です
読み進めると、マーチ家のメイドのジニーの日記が始まります (p12)
ジニーの日記によると、ジニーは殺人者の日記をマーチ家の中で偶然に発見したようです
このあと、殺人者の日記とジニーの日記が交互に書かれています
殺人者の日記
やった。成功だ。ぼくは実行した。(p19)
殺人者が、現在の時間軸で、一人の女性に対して殺人を行いました
その後、マーチ家の隣の家の女性カレンが殺されました
ジニーの日記
誰かいるみたい。下を何か横切った。(p35)
ジニーは殺人者がカレンを殺す直前に殺人者らしき人物に気づいています
この描写があるということは、殺人者はマーチ家の内部の人物なのでしょう
4人の息子を外して考えると、犯人は、父親のマーチ博士、あるいは、母親のマーチ夫人が犯人かもしれません
決め手がないので、読み続けます
略
7章 (p119~)
4人の息子の姪のシャロンが登場します
ジニーの日記
ザカリアスはあの四人の兄弟だったのよ。
(中略)
そう、この家にはもう一人男の子がいて、十歳で死んでしまったの。あのヴァカンスの直後のことよ。(p131)
マーチ家にザカリアスという人物がいたことが明らかになりました
「あのヴァカンス」の内容は、以前の章で言及されています
殺人者の日記
彼女とぼくと二人でかくれんぼをして遊んでいたとき、ぼくは彼女をボイラーの中へ押し込みたくなった。ところが、彼女はぼくより強くて、逆にぼくを組み伏せ、血が出るまでぼくの頭をセメントに打ちつけた。(p65)
「彼女とぼくと二人でかくれんぼをして遊んでいた」とあるので、単純に考えると、殺人者であるぼくの正体はザカリアスであることになります
しかし、シャロンの発言で、ザカリアスがすでに死んでいることと矛盾します
もう少し、読み進めます
その後の殺人者の日記で、殺人者がザカリアスについて言及します
殺人者の日記
シャロンとのことがあったあの日も、地下倉庫でザックは立ち尽くして、取っ組み合う僕らを見ていた。(p134)
殺人者の日記のこの箇所は、殺人者が前に書いていた「彼女とぼくと二人でかくれんぼをして遊んでいた」という箇所と明らかに矛盾します
整理してみると、地下倉庫で、ボイラーでシャロンが誰かと取っ組み合いをしたときに、①殺人者とシャロンがいた、②殺人者とザカリアスとシャロンがいたというどちらかが事実ということでしょう
①ならば、殺人者であるぼくはザカリアスであることになります
②ならば、殺人者であるぼくは4人の兄弟の誰かとなります(大人のマーチ博士やマーチ夫人は、子供であったシャロンと取っ組み合いをして負けることはなさそうなので、この時点で殺人者から外れます)
考えるヒントを探してみると、ジニーの日記では、ジニーはシャロンに4人の兄弟と取っ組み合いをしたかを尋ねますが、シャロンは覚えていないと回答しています
そして、ザカリアス関連のこととして、取っ組み合いのことに言及します
このことからして、②のような、シャロンが4人の兄弟の誰かと取っ組み合いをした可能性は低く、シャロンが取っ組み合いをしたのはザカリアスの可能性が高いと思います
(ただし、シャロンは具体的に誰だったのかは覚えていないp136)
また、この小説全体の特徴として4人の兄弟のそれぞれについての個別の描写が乏しいため、4人の兄弟の一人が犯人である可能性は高くない印象です
(それに、帯の内容から、4人の兄弟は犯人ではなさそうな感じです)
以上から、上記①、殺人者であるぼくはザカリアスである可能性が高いです
この場合、ザカリアスは死んでるとシャロンが言っていることを考慮すると、(a)誰かがザカリアスを名乗って殺人をしている、または、(b)ザカリアスは実は生きていることをシャロンは知らないという可能性があります
(a)だとすると、殺人者であるぼくは、ザカリアスからシャロンとのボイラーでの経緯を聞いていて、ぼくのこととしてシャロンとの経緯を日記に記述したということになります
とすると、4人の息子とザカリアスの兄弟全員に殺人鬼傾向があり、全員が共犯で、殺人者の日記とは、5人の兄弟の誰かが行った犯罪をつなげて一人の"ぼく"の犯行として書いているのかもしれません
(b)だとすると、シャロンが知らないだけで、ザカリアスは生存しているということだと思います
(ジニーがシャロンと接触し始めたら、殺人者がぼくがザカリアスであることをやたらに否定し始めたことから、殺人者とザカリアスに関係があることは間違いなさそうです)
現時点では(a)(b)どちらかなのか決定打はないので読み進めます
シャロンが殺人者に殺されます(p140)
ジニーがテープレコーダーで殺人者の声を録音することに成功します(p152~)
ジニーは、殺人者の声は4人の兄弟の声とは異なるものと思ったようです
これで、(b)のザカリアス生存という可能性が高まりました
(略)
エピローグ (p307~)
ザカリアスが犯人でした (p309)
犯人当たり!